ACTION REPORT

超指向性スピーカー×「寿司」!?――技術をエンタメにする、引き算の美学

公開: 2026.07.31   FRI

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あなたは寿司屋の店員です。

にぎわう店内に、3名のアンドロイドが来店しました。
誰かが注文をしているようですが、ガヤガヤしていて聞こえません。
右の子、左の子……あ、真ん中の子の正面に立つと聞こえます!

「……うに食べたい」

仲間の店員と協力して、一刻も早く、真ん中の子にウニを届けましょう!


本日は、丹青社CMIセンターの『超文化祭2025』で初公開した、ちょっと変わったゲームのお話。冒頭は、超指向性スピーカーを使った音探しゲーム『聴こえま寿司』の一幕です。

この風変わりなコンテンツの裏側には、若手クリエイターたちの技術への偏愛と、プロとしての引き算の美学がありました。


登場するひと



  • 中津 正樹

    『聴こえま寿司』企画リーダー。メディアデザインを基盤に、『体験者の能動的な行動を促進する体験設計』を軸として活動。デジタル・アナログの領域を問わず、新規メディアにおける効果分析とそれに基づく施策のブラッシュアップを得意とする。また、個人活動として「鏡」をはじめとする反射素材を用いたメディアアート制作を行い、素材の特性を生かした視覚体験を探求中。



  • 森 遥香

    『聴こえま寿司』企画・キャラクターデザイン担当。飲み会の「切ない実体験」を企画に昇華させた立役者。学生時代に憧れた「空間演出の裏側」を現場で学び、知識を開拓中。映像・デザインのスキルを生かした提案に自信あり。

学生時代から温めてきた「音の現象」への好奇心


「特定の場所に立った時だけ音が聞こえ、数十センチ動くと消える。耳に直接入ってくる直線的な音の『聞こえ』も、現象として面白いなと思っていました。」

そう語るのは、入社4年目・本作企画リーダーの中津です。学生時代から超指向性スピーカーの「音の聞こえの独自性」に魅了され、いつかこのデバイスを使って新しい体験を作りたい、とひそかに胸のうちに抱き続けてきたそうです。

超指向性スピーカー

特定の場所を狙って音を届けることができるスピーカー。美術館などの『分音』が必要なシーンで活躍する。

温めてきたその思いをぶつけた先は、『超文化祭2025』。

しかし、技術的に面白い「現象」を、誰もが楽しめる「コンテンツ」へと昇華させる道のりはなかなか険しく、今作にたどり着くまでに10案以上の企画がボツになるという崖っぷちを経験します。

チームを救ったのは、入社3年目のメンバー・森の、「飲み会で自分の声が店員さんに届かない」という切ない実体験でした。

ひらめきは、飲み会で舞い降りる。


  • 『超文化祭2025』で実際に使われた小物

「私、声が小さくて、店員さんに声が届かないことがよくあるんです。その日も飲み会で注文が通らなくて、『注文を店員さんまで一直線に飛ばせたらいいのに』ってふと思ったんです。」

「注文」を超指向性スピーカーと組み合わせたら面白いかも……と、ひらめいた森。リーダー・中津におずおずと企画を出します。

温めてきた中津の「技術への偏愛(?)」と、森の「リアルな日常の困りごと」。この二つが結びついた瞬間、『聴こえま寿司』の輪郭が浮かびあがりました。


  • 森による『聴こえま寿司』初期イメージ

90秒で伝えるための「引き算」


企画の輪郭が見えてからも試行錯誤は続きました。当初は「店員役」と「客役」の2人が協力する体験設計にしていましたが、社内外の先輩方の反応は「複雑すぎる」という厳しいものでした。イベントでの体験時間は、わずか90秒です。

「90秒という限られた時間の中で『説明なしに分かってもらう』ための引き算を学びました。」

そう振り返るメンバーは、要素をそぎ落としつつ、ゲームとしての「手応え」を追求していきます。


  • 検討の結果、来場者には店員役を体験してもらい、客役はシステムにお任せすることに。

  • 最終的には、90秒間で、より多くの寿司を届けて得点を稼ぐタイムアタックゲームになりました。

「お邪魔音(ガヤガヤ音)と注文ボイスの音量バランスは何度も調整しました。ほどほどに難しいけれど、なんとなくネタが分かる絶妙なラインを狙っています。」

体験構造はシンプルに。短い時間のなかにも楽しさを。
細かいところは、体験しながら理解を深めてもらえばいい。

この体験設計の磨き方こそ、丹青社が空間づくりで培ってきた経験のなせる業(わざ)、と言えそうです。


  • 寿司皿を所定位置に置くだけで正誤を判定し、正解数に応じてポイントが自動で加算されるシステム。リレー形式で、チームの合計得点を競います。注文はランダムで毎回変わる仕組み。

自己評価は75点。視線は「世界」へ


  • 「お客さまアンドロイド」のキャラクターデザインは森が担当

展示は大盛況に終わりましたが、リーダー・中津の自己評価は意外にもシビアです。

「楽しさは100点満点ですが、個人としての満足度は75点くらい。音のコンテンツは、動画では凄さが伝わりにくいんです。その壁を越えて、ゆくゆくは世界で評価いただけるレベルの作品を作っていきたい」。さすがは期待の若手。壮大です!

森もまた、次への意欲を隠しません。「自分の悩みから生まれた企画で多くの人を笑顔にできたことが自信になりました。次は海外の方やお子さまもより楽しめるよう、もっとユニバーサルな工夫を盛り込んでみたいです」。

「この技術、どう見せればいいんだろう。」そんな、まだ言葉にならないビジネスの種も、CMIセンターの若手たちなら面白がって調理できるかもしれません。
誰もが楽しめる体験へ翻訳するところから、ご一緒できます。どうぞよしなにお願いいたします。

取材・文:CMI編集チーム・M


Project Information

Title 聴こえま寿司
Year 2025

Project Team

Project Direction 中津正樹
Project Member 森遥香、松下美緒、河村徹、 清水聡(Ray)、田中蓮(Ray)、山口瑠花(Ray)、奥山和弥(Ray)

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