【中の人に聞いてみた】かわいい音声ガイド『ネコカイギ』ができるまで
公開: 2026.07.31 FRI
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渡されたのは、スマ-トフォンとイヤホン。
装着した瞬間に聞こえてきたのは、「にゃあにゃあ」と楽しげに歌う、どこか不思議なBGM。
端末を持って展示に近づくだけで、物語が自然と耳に届く――。
『超文化祭2025』で公開した『ネコカイギ』は、そんな“境界のない音声体験”の実験場でした。
最新技術を「かわいい」で包み込んだ“中の人”たちの、頭の中を覗いてみましょう。
丹青社CMIセンターでは、若手が手を動かして空間体験を試作する『自主実践プロジェクト』を5年続けています。今回はそこから生まれた音声ガイド『ネコカイギ』のお話です。
登場するひと
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五十嵐 優作
『ネコカイギ』システム開発担当。建築が好きなエンジニア。システムも建築も構造に興味あり。好きな構造はシェル構造。
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関本 紗希
前職で読み聞かせ音声の配信や、音声ガイドイベントなど、音声関連の新規サービス立ち上げを経験し、2025年に丹青社入社。大の犬好きで、すきま時間に可愛い犬の動画を眺めるのが趣味だが、『ネコカイギ』の制作を経てほんの少しネコ派に傾く。
技術の「使い道」を、手を動かしながら探る。
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『ネコカイギ』体験中の様子
「50センチ単位で人の位置を特定できる“高精度屋内測位システム”。この技術を、なにかに生かせないかな……」。システム開発を担う五十嵐は、ラボにある最新機材を前に、思案し始めました。
きっかけは、社内で議論されていたアミューズメント施設の「待ち時間の退屈さ」や「多言語対応」といった課題。 「人が近づくだけで自然に始まる音声体験を作ることができれば、待ち時間をワクワクに変えられるかも……?」
こうして、耳型カチューシャ × 音プロジェクトの幕が開きます。
そもそも、どうして「耳型カチューシャ」なのでしょう?
それは、テーマパークで使うことを想定して企画がスタートしたためです。うまくグッズ化できたなら導入施設側の収益になり、さらに来場者の課題までも解決できる。そんな芯の通った企画なのです。技術をそのまま見せるのではなく、「かわいい」という分かりやすい入口に変換して、体験へ落とし込むという狙いもあります。
当初はカチューシャひとつで動く、完全独立型を目指していました。再生・位置検知・電源。すべての機能をカチューシャに集約したプロトタイプをいくつも試しましたが……重い。頭に感じるズッシリした重みは、目指すものではなかったそう。
「そこで、切り離すことにしました。」
機能はスマートフォンへ逃がし、頭部は軽く。体験そのものに没入できる方向へ舵を切りました。
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実際の『ネコカイギ』体験セット。「近づく」ことが再生スイッチになるので操作は不要。サブコンテンツとして、スマ-トフォン上にエリアマップや音声テキストを目視できる仕様になっています。カチューシャひとつで動く「完全独立型」もいつか実現させたい!
五十嵐の決断により、軽量かつ快適な音声ガイドシステムができあがりました。
近づくだけで再生される、ということは「再生ボタンを押す」手間がなくなるということ。
体験してみると驚きます。……なんか、自由だ!
では、そのシステムにどんなコンテンツをのせましょうか。プロジェクトチームは考えます。
丹青社は空間屋。展示空間にふさわしい音声ガイドとは、いったいどんなもの?
導き出した答えは、「脇役」でした。
空間屋が考える、“一歩引いた”音声ガイド
「主役はあくまで展示。それを引き立てる “よい脇役” 的な音声ガイドを目指しました」と話すのは、シナリオを担当した関本です。
テキストをじっくり読んでほしいエリアでは、あえて音声を「一歩引いた雑談風」に。
エリアを移動するシーンでは、空気感をつなぐ細やかな演出を。
「ふとした瞬間に現実に戻ってしまわないよう、没入感を途切れさせないシナリオづくりを意識しています。」
いろいろなネコが登場して、たわいない話をしたり、解説を補足したり。ネコたちの雑談が、次のエリアへとうまく体験者をつないでくれる、心地良いガイドに仕上がりました。
実は前職で有料音声ガイドのコンテンツ制作を担当していた関本。さすがのクオリティです!
展示物の方向から音が聞こえる。展示に近づくほど音が大きくなる。といった、インタラクティブな音環境づくりにも挑戦しています。
AIが、体験のしめくくりを編集する。
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『ネコカイギ』のエリアは、座っていただく椅子もネコ仕様!
さて、音声体験のみでも十分に仕上がっているのですが、チャレンジ精神旺盛な五十嵐は、フィナーレにもうひとつ見どころを用意していました。それが、コンテンツ名にもなっている『ネコカイギ』です。
ネコカイギとは、ネコ社会の一員として意見を出し合うカイギ。展示を巡ったあとの「今の気持ち」をスマ-トフォンへ入力すると、AIがその場で読み解いて、一つの文章にまとめ上げる、という試みです。体験の流れはこのような感じ ↓↓
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展示を巡ったあとの「今の気持ち」をスマ-トフォンへ入力すると、まずはひとりひとりの感想が、正面のモニターにスクロールで流れます。
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その後、30秒ほどで、来場者ひとりひとりの言葉をAIが読み解いて、ひとつの「総意」にまとめます。新しい「参加型の締めくくり」のかたちかも。
システマティックなAIが、少し強引にまとめるからこそ生まれる予想外の結論に、来場者からは、クスクス笑い声があがっていました。AIを効率化ではなく、共感とユーモアのために使う。それもまた、CMIセンターらしい遊び心だと感じます。
「小さなイラッ」を、次の種に
展示は大盛況でしたが、“中の人”たちの視線はすでに次へと向いています。
「番号を見逃したり、端末が重かったり……。そんな音声ガイドの小さなイラッを、いい感じに解決したいんです」そう話す五十嵐は、現在は、今回の学びを糧に、よりコストを抑えメンテナンスもしやすい新しいシステムを開発中とのこと。
技術そのものは新しくなくても、見せ方や体験の設計次第で、空間はもっと面白くなる。
「AIと対話しながら巡る相棒型ガイドや、マップとリンクした情報に即座にリーチできるガイドなど、試したいことがまだまだあります。理想は、かゆいところに手が届く音声ガイドです」。
ネコの手ならぬ、プロの知恵、お貸しできます。どうぞ、ごひいきに。
取材・文:CMI編集チーム・M
ねこのイラスト:HANDSOMEworks × 樋口晶子さん
Project Information
| Title | ネコカイギ | |
|---|---|---|
| Year | 2025 | |
Project Team
| Project Direction | 五十嵐優作 | |
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| Project Member | 木村晃子、関本紗希、丹羽由香、 石田裕美 | |








