DIVE into “アリス”の世界 ―― 思考と手の速さでつくる、XR制作記
公開: 2026.08.31 MON
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VRゴーグルをつけて、アリスの世界へ。
ここは、現実なのか、夢なのか。
自分が本の中へ飛び込んだのか、あるいは物語がこちらへ溢れ出したのか。
今回は、丹青社CMIセンターが『超文化祭2025』で公開した 約5分間のXR作品『Dive into the tales ~不思議の国のアリス編~』の制作裏話を“中の人”に伺います。
そこには、最新技術への好奇心と、空間とXRの接続にまつわる多くの試行錯誤がありました。
登場するひと
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橋本 憲明
『Dive into the tales ~不思議の国のアリス編~』ディレクション・システム開発担当。実空間×デジタルが大好物なガジェット好きエンジニア。最近のお気に入りはARグラス。
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坂尾 南帆
『Dive into the tales ~不思議の国のアリス編~』ディレクション・企画・Unityでのコンテンツ制作・BGMを担当。XRやハプティクスなど五感を使った体験づくりに興味津々。メンバーいわく「チームの羅針盤」。
目の前の景色に、デジタルで「何か」を出したい
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『Dive into the tales ~不思議の国のアリス編~』体験風景(仮想のトンネルに入るシーン)
「実空間に、仮想で“何か”を出すのがシンプルにおもしろくて」
そんな橋本の純粋な好奇心から、本プロジェクトは動き出しました。下は、過去の『超文化祭』で橋本が実空間に出してきた“何か”たち。スマートフォン越しに、いろいろなものを出してきました。
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怪獣、イグアナ……ほかにもいろいろ。 -

今回、橋本のチームが目をつけたのは、昨今話題の「フリーロームVR」。VRゴーグルをつけて、自分の足で空間を歩き回るバーチャル体験です。
フリーロームVRの面白さはいくつかありますが、特に挙げるとするならばこの2点。
一つめは、仮想と実空間の境目が溶ける身体感覚。たとえば仮想のトンネルに入るシーン。実際に頭をぶつけることはないのに、体験者は反射的に天井を避けて少しかがんでしまう。こうした身体的な反応は、座って体験するVRでは起こることが少ないフリーロームVRならではの感覚です。
二つめは、同じ空間を、何度でも別世界として扱えること。言い換えれば、一つの空間に何倍もの価値を持たせられるという点です。「同じルートでも、往路と復路で全く違う景色を見せることができる。限られたスペースを2度・3度と美味しく使えるこの技術は革命的」とは、本作の企画を担った坂尾の言葉です。
フリーロームVRから、フリーロームXRへ
「自由に歩き回れるVR体験(フリーロームVR)を作ってみたい」――そんな想いから始まった本プロジェクト。橋本と坂尾が率いるチームは、そこからさらにもう一歩踏み込みました。
「すべてがバーチャル」で完結させるのではなく、レンズ越しに見える現実の景色に、仮想の映像を重ね合わせる。目指したのは、そんな「フリーロームXR」への拡張です(※本作では場面に合わせてVRとMRを切り替えるため、総称して「XR」と呼んでいます)。
空間デザインを手がけてきた丹青社だからこそ描ける、リアルとバーチャルをひとつの体験として重ねていくアプローチ。その全貌は、後ほどじっくりご紹介します。
ざっくり解説 AR・MR・VR・XR
- AR:景色になにかを重ねる(instagramの顔フィルター、家具ECアプリの試し置き など)
- MR:現実と仮想が相互作用(仮想キャラが目の前に実在するソファに座る など)
- VR:ゴーグルをかぶって別世界へ
- XR:上記すべての総称
※ 呼び方や境界は個人差があり、文脈によっても変わります。ここでは本記事内の“ざっくり整理”としてご覧ください。
「やってみたかった」 を全部、自分たちの手で
思い描くフリーロームXRをかたちにするために、チームが選んだのは、企画・シナリオから、イラスト、モーション、アプリ実装まで――全工程をすべて自社で完結させる「完全内製」という道でした。理由はシンプル。「やってみたかったから」。
でも、実際やってみると、想像していた以上に大変だったそうで……。
「これだ!」とひらめいた演出が、実機で試すとイマイチだったり、思うように表示できなかったり。
そのたびにラボ(Mk_3)へ集まり、思いついたことを「パッと試して、効果が出なかったらパッとやめる」。その試行錯誤をひたすら繰り返したといいます。
話し合った翌日にはモデリングが「かたち」になっていたり、70カット以上のイラストをメンバーが爆速で描き上げてくれたり。こうした高速検証サイクルがあったからこそ、自分たちの目指す表現をとことん追求できたと二人は振り返ります。
2Dの手描きイラストが、空間に立ち上がる
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ともにMRシーン|1枚目:2Dイラストが立体的なトンネルに。 -

2枚目:体験者と絵のパーツが正しい前後関係だから、自然
本作の最大の特長は、MR(複合現実)として、2Dの手描きイラストで構成した仮想空間を会場の実空間に重ね合わせて立ち上げている点です。絵本の世界を表現するため、2Dイラスト中心でいこう、と企画序盤から決めていました。
制作したイラスト総数は70カット超。それらを3D空間に一枚ずつ丁寧に配置することで、絵本の世界が立ち上がります。
苦労したのは、仮想オブジェクトが本当にそこにあるような存在感を持たせること。
「オブジェクトをどう動かせば自分たちの目指す表現に近づくんだろう。自然に見えるって、どういうことだろう。そうした問いのひとつひとつを、検証プロセスで確認・追求していきました。」(橋本)
会場の実空間を3Dスキャンし、座標・スケールに合わせて絵のパーツを配置。すると、実空間の人やモノと、XRの中の世界の前後関係がきちんと成立します。
体験者が手前を横切るとき、奥の木がちゃんと体験者の身体に隠れる——そうした関係性が保たれているから、奥の木は「奥にある」ように見えるのです。
MRとVRを行き来する
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「完全VR」のシーン
本作の大部分は、会場の風景がパススルーで見えているMRですが、現実が完全に消えて仮想の部屋に入り込む「完全VR」のシーンもあります。イラストのスケール感で「自分が小さくなった」と錯覚させる、現実では絶対に味わえない演出です。
MRとVRを自在に行き来する——これが、本作が単なる「フリーロームVR」ではなく「フリーロームXR」である理由。性質の違う表現をひとつの物語として破綻なく重ねた、体験者を一番あっと言わせたシーンでした。
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デジタルだけでなく、リアルな造作もセットで。これが丹青社の真骨頂です。
物語は、まだ入り口
展示は大盛況。「このまま施設で展開できる!」との声も集まりました。それでも坂尾の自己採点は「100点中92点」。残りの8点は、時間切れで手が回らなかった微細な調整への「伸びしろ」です。
「次はもっと実空間との“ひも付け”を深めてみたい。たとえば、目の前の壁を、仮想のキャラが破壊して現れてくるとか――そんな、実空間そのものを使った演出にも挑みたい」と語る橋本。坂尾も触覚を再現するハプティクスのリサーチを始めています。
超速試行錯誤サイクルを武器に、次は誰と、どんな物語をつむぐのか。ひとつの空間に、いくつもの物語を——そんなご相談もお待ちしております。
取材・文:CMI編集チーム・M
Project Information
| Title | Dive into the tales ~不思議の国のアリス編~ | |
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| Year | 2025 | |
Project Team
| Project Direction | 橋本憲明、坂尾南帆 | |
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| Project Member | 木下裕司、平野友宏、高田和実、大西真帆 | |




